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○ あなたも狙われている?こわ~い共謀罪

弁護士 白神優理子

 通常国会で、安倍政権は共謀罪(テロ等準備罪)法案を重要法案と位置付けています。安倍政権のもと、2013年に特定秘密保護法、2015年に戦争法(安保法制)が相次いで成立し、そして今回は共謀罪。2017年4月29日に、戦争法をなくしたい!オール市民の会が行なったワークショップで白神優理子弁護士(八王子合同法律事務所)が「あなたも狙われている?こわ〜い共謀罪」と題して講演しました。一部を紹介します。(文責・見出しは編集部の責任です)

テロ防止のためは嘘
日本では法制度上整備済み

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「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会」

 今回の共謀罪は過去3度、廃案になったものと本質は変わらないと弁護士の仲間で声明を出しています。
 安倍政権はテロ等準備罪(共謀罪)が必要な理由を、国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)を締結できなければ、2020年のオリ・パラは開催できないといっても過言ではない、一般の方々が対象となることはありえない、国民に理解が得られるよう法整備につとめると言っています。
 これはすべて嘘。テロ防止のためと名前を変えて今回出て来ていますが、すでに日本はテロ対策が十分に出来ています。テロ防止関連条約、国際的な条約、それらすべてを日本は締結しています。それに合わせ、国内法でもテロ防止のためのテロ資金提供処罰法、また殺人予備、内乱予備、凶器準備集合等等、主要な重大犯罪には、犯罪を実行する前に対処できています。過去3回、共謀罪は廃案になっていますが、その際にはテロ対策という話はありませんでした。そして実際日本ではテロ事件が起きていないことからも、十分テロ対策は日本の法制度上整っているのです。

作らなくても条約批准は可

 次に条約批准には共謀罪を作らないといけないのか。条約批准国は187カ国ありますが、そのうち条約批准のために共謀罪を創設しようとした国は2カ国としか政権側は説明できませんでした。そもそもこの条約自体がマフィアなど経済的利益を目的とする組織犯罪を防止するための条約で、テロという言葉は出てきません。また条約の34条1項には、国内法の基本原則に従って必要な国内法を整備すればよいとなっています。実際アメリカではいくつかの州で共謀罪の制度がありますが、ない州もあるので条約を批准する際、共謀罪の扱いについて留保しています。つまり共謀罪を作らなくても、条約批准はできるのです。
 オリ・パラでのテロ防止に共謀罪が必要と政府は言っていますが、はたして有効でしょうか。いくつかの州で共謀罪があるアメリカでは9・11同時多発テロは起こりました。一方で共謀罪のない日本では2002年日韓W杯は大成功していますし、2016年にはオバマ大統領も広島を無事に訪問しています。しかも首相自身が2013年の招致演説で「今も、2020年を迎えても世界有数の安全な都市、東京」と言っているのです。したがって政府の言い分は嘘ばかりです。

運動を止めたい安倍政権

 では、今なぜ共謀罪を導入したいと安倍政権が思っているのか。暴走政治に、かつてないほどの多くの市民が反対の声を上げています。この行動が、南スーダンからの自衛隊撤退や東日本大震災の被災者への暴言をした大臣を辞任に追い詰めました。また、世界でも7月には核兵器廃絶を求める人々の運動で条約できるのではないかというところまで社会は前に進んでいます。デモや署名は大きな意味があるのです。野党が手をつなぎ、政治を変えようという動きにもなっています。だから安倍政権はこの動きを止めて野望をかなえるために、共謀罪を国会に提出するに至っているのが今の状況です。

捜査機関のさじ加減で
誰もが組織的犯罪者集団に

 さて、共謀罪の具体的な内容です。今すでにある犯罪の、長期4年以上の刑を定める277の犯罪について、組織的犯罪集団の団体の活動として犯罪を2人以上で計画、話し合いをし、その準備行為が行なわれた場合は話し合った人たち、その場にいた人たちを逮捕、処罰することができるというものです。まず、対象犯罪277としていますが、テロ以外の犯罪が167です。「無許可のキノコ狩り」「お墓を荒らす」「著作権法に違反する」等々、テロとは関係のない犯罪が多く対象に含まれているのです。内容を見てもテロ対策ではないことが判ります。

メールでも共謀は成立か

 テロ組織や暴力団に加入していなければ大丈夫なのでしょうか。首相は「一般の方々が対象になることはありえない」と言っています。ところが金田法相は「元の団体の性質は関係ない。性質が変わった場合は、組織的犯罪集団にあたる」と言っており、井野法務政務官は「捜査の結果、組織的犯罪者集団の方だったのか、一般の方だったのか言える」と発言しています。誰もが対象であるということです。居酒屋で若い会社員たちが気に入らない上司をとっちめてやろうとか冗談で話していたのを捜査当局が共謀だと判断したら、組織的犯罪者集団となってしまいます。
 さて、共謀というのはどういう時に認められるのでしょうか。「目配せしただけ」「同席して反対せずに聞いていただけ」といった場合でも、共謀は成立するのです。金田法相が「メールやLINEでも合意は成立することはありうる」と言っています。捜査当局のさじ加減で共謀だとされるのです。

密告・監視の社会が到来

 共謀罪法案の議論の中で、批判をかわすために政権は新たな要件を一つ付け加えました。「準備行為をしなければ処罰されない」。現在の刑法の予備罪、準備罪というのは今回の共謀罪のいう準備行為とは別です。刑法では「殺人目的でピストルを買う」「放火目的でガソリンを購入する」など客観的に見て殺人、犯罪の準備とわかるものを準備罪としています。ところが共謀罪では「ATMで預金を引き出す」といった行為でも、それを捜査機関が準備行為と判断すれば、処罰されてしまいます。結局、心の中を処罰するのが共謀罪なのです。
 捜査機関は、これまでにも盗聴、盗撮を行なった事実がありますが、共謀罪法案を手渡してしまえば、政府に都合の悪い運動をやっている人はその運動ばかりか生活まで監視されるようになり、きっかけを見つければ、それを口実に処罰されます。そのような恐ろしい社会ができてしまいます。2016年、刑事訴訟法の一部改悪で捜査機関が盗聴できる範囲が拡大しました。さらに司法取引制度も導入されました。共犯者を告発すれば、処罰が軽減される制度です。類似した文章が、共謀罪法案にもあります。自白をした人は刑を減免するという文章です。共謀罪ができれば、盗聴、密告、自白偏重の監視社会がやってきます。
 近代刑法では既遂、罪を犯した場合処罰されるのが大原則です。しかし刑法は保護法益があります。殺人罪については命を守り、窃盗罪については財産です。命は最も大事な利益なので、ピストルで撃ったが相手が死ななくても「未遂」として処罰されますし、それを買っても予備罪、準備罪として処罰されるのです。刑法では例外的です。話し合ったということだけで処罰するのが共謀罪ですので、近代刑法の大原則が壊されてしまうのです。



共謀罪ノー、憲法守れ
練馬で300人がパレード

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練馬駅周辺をパレードする参加者

 【練馬・書記・桑原研二記】5月3日、有明・東京臨海防災公園での憲法集会に呼応して、練馬駅前の平成つつじ公園をスタートに「いらない‼共謀罪ねりまパレード」を実施。約300人(土建56人)の参加で「平和憲法を守れ、共謀罪導入反対」の声を上げました。
 青年の代表で練馬支部の青年部長もスピーチ。パレードでは車椅子の参加者もあり、「共謀罪の本質はほとんどの区民に知らされていない」「有明の集会には参加できなくても、自分も反対の意思表明をしたかった」と地域で声をあげるパレードに多くの区民から賛同をいただきました。
 主催は、戦争法に反対し、地域労働3団体を中心に多くの市民団体・グループ、政党・会派で結成し、この間3回にわたり1000人以上の集会・パレードを実施してきた「戦争法NO!ねりま集会実行委員会」です。共謀罪についても実行委員会独自に作成したリーフレット5万部をすでに配布、区内各地で旺盛に宣伝行動が展開されています。

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